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訪問先で「いつもと違う」に気づく|在宅フィジカルアセスメントの5つの視点

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在宅フィジカルアセスメントに使う聴診器と測定器具のイラスト

血圧やSpO2は前回と近いのに、いつも玄関まで来る方が、今日は居室で横になっている。数値だけでは表れない「いつもと違う」が、訪問の入り口で見えることがあります。今日は何がつらくて、普段のどの動作が変わったのか。本人の話と観察、測定値を合わせ、主治医などへの相談につなげてみましょう。

入室したら、まず反応と呼吸を見る

入室後は、反応、呼吸、会話、顔色、姿勢を確認します。急な呼吸困難、意識がおかしい、突然の片側の脱力やろれつの変化、激しい胸・背部痛などは、通常の測定一式を終えるまで待つ場面ではありません。119番通報など必要な緊急対応を優先します。消防庁の高齢者向け救急症状が判断を始める手がかりになります。

緊急対応が必要なときも、症状が始まった時刻と、最後に普段どおりだった時刻を混同しないようにします。本人や家族が分からなければ、そのまま不明と伝えます。日本赤十字社の観察の案内も、現場の安全を確かめ、反応や呼吸を最初に見る流れを示しています。

呼吸や反応に緊急性がある場合は測定一式を待たず救急対応へ。緊急性と並行して普段の状態と測定条件を比べ、報告後の確認までつなぐ。
数値と生活の変化をつなぐ。図を大きく見る

架空事例:SpO2だけを見ると「前回どおり」に見える訪問

以下の人物・数値・連絡経過は、考え方を示すために作った架空の例です。数値は受診や治療の共通基準ではありません。

Bさんは慢性の呼吸器疾患で療養中。前回は玄関まで歩き、話しながら着替えていました。今日は椅子に座ったまま「朝から動くとつらい」。測定前から、普段の動作との違いがあります。

比較する項目 前回の記録 今日、確認した事実
移動・会話 玄関まで歩く。会話しながら着替え 居室で待機。「着替えを休みながらした」と本人談
呼吸 座位・安静時18回/分 座位・安静時24回/分。会話の途中に休む
SpO2 96%、室内気、右示指 同じ条件で96%。波形・装着状態を確認
自覚症状 息苦しさの訴えなし 今朝から動くと息苦しい。強い胸痛の訴えなし
食事・服薬 朝食摂取、定時薬使用 朝食は普段の半分と本人談。朝の薬の使用を確認

SpO2は同じ96%でも、呼吸数は増え、会話や着替えの途中に休むようになっています。主治医には、数値が同じだったことと、こうした新しい変化の両方を伝え、その場で対応を相談します。苦痛が強まる、意識や反応が変わるなど緊急性が高い状態なら、折り返しを待たず救急対応へ切り替えます。

電話では、数値と一緒に着替えの変化も伝える

「Bさんの訪問中です。今朝から動くと息苦しく、今日は玄関まで来られず、着替えも休みながらだったそうです。座位安静時の呼吸数は24回、SpO2は室内気で96%、前回は18回・96%でした。会話の途中に休みます。朝の定時薬の使用は確認できています。新しい呼吸・活動の変化があるので、本日の診察の必要性と、待機中に確認する項目を相談したいです。」

電話の相手が、同じ記録を見られるとは限りません。相談に必要な値と測定条件は口頭でも伝えます。「着替えを休みながらした」は本人の話、「会話の途中に休む」は訪問中に見た様子です。どこまで自分が見たのか、まだ聞けていないことは何かも添えると、受け手が状況を捉えやすくなります。

気になった変化から、観察を広げる

息苦しそうなら、いつからかを聞き、会話や呼吸数、体位による違いなどへ目を向けます。むくみが気になれば、前回と同じ場所か、片側か両側かを見ます。何が変わったのかを考えながら、追加で観察したい点を選びます。下表はその整理の例で、所見から診断を決める表ではありません。

気になった変化 追加で確かめること 記録から消さない条件
呼吸がつらそう 呼吸数、会話、症状の開始、体位、SpO2、左右・部位を合わせた聴診 室内気か酸素使用中か、機器・体位・測定時刻、聴取できなかった部位
むくみが増えたように見える 左右、範囲、皮膚、本人の痛み、体重記録と測定条件 片側か両側か、前回と同じ場所を見たか。独自の「+」評価を他者へそのまま使わない
腹部の張りや痛み 痛みの開始・部位、嘔吐、便・ガス、食事、腹部所見 音だけでまとめない。強い急な痛みなら評価を長引かせない
動きが減った いつから、痛み、食事、睡眠、服薬の変更、本人が困る動作 「歩かない」と「歩けない」を分け、実際に見た動作と本人談を区別

腹部の張りがあるときも、音だけで判断しないようにします。腸閉塞を疑う患者を対象としたBreumらの原著研究では、腹部聴診の診断精度や観察者間の一致に限界が示されています。音が聞こえても、それだけで大丈夫とは言えません。痛み、嘔吐、排便などの経過と合わせて相談します。

聴診の前には「少しテレビの音を小さくしてよいですか」と声をかけ、肌へ適切に当てられるよう協力をお願いします。無理な体位変換はせず、左右の同じ高さを比べます。触診も、何のために触れるかを伝え、痛みや羞恥に配慮します。体位や痛みのために聴けなかった、触れられなかった場所があれば、理由と一緒に記録へ残します。

測り直している間も、本人の様子を見る

SpO2がいつもと違う値を示したら、装着位置や体動、爪の装飾、脈動、周囲の光などの影響を見ます。厚生労働省掲載のパルスオキシメータ表示ガイドラインにも、こうした誤差要因が示されています。ただ、指を替えたり機器を見たりしている間も、本人の呼吸や反応から目を離さず、必要な対応を遅らせないようにします。

記録の書き方 次の人が困る理由 読める形への修正例
「SpO2正常」 値も測定条件も分からない 「10:10、座位安静、室内気、右示指96%。会話途中に休む」
「浮腫悪化」 比較場所・方法が不明 「前回と同じ脛骨前面を確認。両側の圧痕の範囲が広い。体重の測定条件は未確認」
「主治医へ報告済み」 返事や次の担当が分からない 「10:20連絡、10:30医師回答。本日診察へ調整。訪問看護師Aが受け入れ時刻を確認」

修正例の測定値も架空です。実際の値・指示へ置き換えます。

診察の返事が来たら、受診まで誰が担うかを決める

Bさんの架空例では、主治医から、本日の診察を調整するという返事が来ました。次は、受け入れ時刻を確かめる人、家族と移動方法を相談する人、待つ間の様子を見る人を決めます。返事を受けた後の動きも、次のように残しておきます。

10:10 Bさん、座位。本人「朝から動くとつらい」。呼吸数24回/分、SpO2 96%(室内気、右示指)、会話途中に休む。前回は呼吸数18回/分、SpO2 96%、玄関まで歩行。10:20主治医へ経過と所見を電話報告。10:30、本日診察へ調整する旨の回答。A看護師が医療機関の受け入れ時刻を確認し、管理者が家族と移動方法を調整。10:40も座位で待機、本人との会話は可能、呼吸苦の新たな増強なし。受診まで状態の変化を確認する担当を家族と管理者に共有。呼吸困難・反応の変化時は救急対応と説明。

10:40にも会話ができ、呼吸苦の新たな増強がなかったという記録があれば、連絡した後の様子まで伝わります。「変わりなし」で済ませず、いつ、何を見たのかを残しましょう。訪問看護記録の書き方も参考に、最初に気づいた動作の違いから、相談の返事、受診までの役割を所属先の看護記録につなげておきます。

役に立ったら、同僚にも。

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