訪問看護の感染対策:手指衛生・PPE・物品管理を訪問の流れで確認
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おむつ交換のあと、同じ手袋でバッグを開けていないか。創処置の途中でスマホを触り、そのまま清潔物品へ戻っていないか。在宅の感染対策では、一つの訪問の中で、手と物品がどこへ移るかを具体的に見ると、対策を実行しやすくなります。
病名より先に、ケアで何がどこへ付くかを見る
標準予防策は、感染症が診断された人だけに行う対策ではありません。血液、汗を除く体液、分泌物、排泄物、粘膜、傷のある皮膚などを扱うリスクに合わせて手指衛生・PPE・器具管理を行います。厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き」第3版とCDCの標準予防策に沿い、疾患や処置に応じた感染経路別予防策を追加します。
| 予想する曝露 | 準備する防護を考える | 在宅で決めておく場所 |
|---|---|---|
| 手へ血液・体液等が付く | 手袋、必要な手指衛生 | 脱ぐ場所と、外した直後の手指衛生 |
| 衣服や腕が汚れる | エプロン・ガウン等 | 清潔な物品へ戻る前の着脱・廃棄 |
| 顔にしぶきが飛ぶ | マスク、眼の防護等 | 外側を触らず外せる場所 |
| 吸入曝露への追加対策が必要 | N95等を含め、疾患・処置の手順で確認 | 準備・適合確認・密着確認と訪問体制 |
全員に同じPPEを着ける意味ではありません。予想される曝露と必要なケアを確認して選びます。足りない防護具のまま予定どおり始めず、管理者と提供方法を調整します。
架空事例:排泄ケアから創処置へ移るとき、手順をどこで区切るか
以下は作成した架空の場面です。Eさんの訪問で、排泄ケアと下腿の創処置が予定されています。介助中に家族から「薬袋も見てください」と頼まれました。ケアを区切らずに薬袋・スマホ・バッグへ触れると、清潔物品の置き場所を用意していても汚染を持ち込む可能性があります。
| 場面 | 起こりやすい手の移動 | 区切って行うこと |
|---|---|---|
| 準備 | 家具を動かして、そのまま処置物品を開ける | 作業面と物品を準備し、清潔操作の前に手指衛生 |
| 排泄ケア中 | 使用中の手袋でバッグから追加物品を取る | ケアを安全に区切り、手袋を外して手指衛生。必要物品を取り、新たな手袋へ |
| 薬袋の相談 | 体液を扱った手袋で薬袋・スマホを触る | 清潔操作に混ぜず、手袋と手指衛生を切り替えた後に対応 |
| 創処置へ | 同じ手袋で創・未使用ガーゼへ移る | 排泄ケアの使用後物品を分け、手指衛生と処置の手順を改めて確認 |
| 退出 | 使用後の器具を未使用物品の区画へ戻す | 所定の洗浄・消毒または分離容器へ。未処理の器具を清潔扱いにしない |
手袋を外した後も手指衛生を行います。同じ利用者さんでも、汚染部位から清潔な部位へ移るときは切り替えが必要です。WHOの外来・在宅ケアにおける手指衛生ガイドとCDCの医療職向け手指衛生を、実際のケアの流れへ当てはめます。
「すぐ取れる」より、触らずに済む準備
必要な量の物品を先に分け、追加物品が必要になったときの動作を決めます。ただし、出した未使用物品がすべて清潔なままとは限りません。置いた場所、触れた手、包装の状態を確認して、所属先の物品管理手順で判断します。家族にも「この区画は処置用なので、いまは触らず置いてください」と具体的に説明すると共有しやすくなります。
手指衛生を、玄関の一回で終えない
WHOの5つのタイミングは、利用者への接触前、清潔・無菌操作前、体液曝露リスクの後、利用者への接触後、周辺環境への接触後を示しています。
| 訪問でのタイミング | 忘れやすい具体例 |
|---|---|
| 本人に触れる前 | 玄関で消毒後、ドアや電話に触れてからバイタル測定 |
| 清潔操作の前 | ベッド柵の調整後に創処置の物品を開く |
| 体液曝露リスクの後 | 排泄ケア後に手袋を外す |
| 本人・周辺環境へ触れた後 | 体位変換や寝具調整後、そのままバッグを閉める |
通常、目に見える汚れがなければアルコール手指消毒を使い、使用量・方法は製品表示に従います。目に見える汚れがある場合などは石けんと流水で洗います。ノロウイルスが疑われる嘔吐・下痢のケアでは、アルコールだけで済ませず石けんと流水による手洗いを確認します。厚生労働省ノロウイルスQ&Aを参照してください。
水場・作業面・使用後物品の三つを、訪問前に決める
在宅では、病院の処置台や手洗い設備と同じ条件を前提にできません。「何がないか」だけでなく、実施できる方法を初回から確認します。
| 確認する場所 | 本人・家族との相談例 | 決まらないときの対応 |
|---|---|---|
| 手洗い | 「こちらの水場と石けんを使ってよいですか。乾かす物も用意します」 | 必要な手指衛生ができる手順を、ケア開始前に管理者へ相談 |
| 作業面 | 「この場所に清拭できるトレーを置いてよいですか」 | 床や汚れた面へ直置きせず、準備方法を調整 |
| 使用後物品 | 「未使用物品と別の、この容器に入れます」 | 回収・処理主体、自治体の扱い、鋭利物の経路を確認 |
共用器具は製品と病原体に合う方法で洗浄・消毒し、乾燥・収納まで確認します。何でもアルコールで拭けば十分とはいえません。消毒剤の濃度や接触時間は対象と製品で異なるため、製品表示と所属手順を使います。次亜塩素酸ナトリウムを酸性製品等と混ぜず、換気や材質への影響も確認します。厚生労働省の消毒・滅菌資料を参照してください。
予定外の症状は、訪問順より先に状態と体制を相談する
発熱・咳・嘔吐・下痢を知ったときは、開始時期、本人・家族の状態、受診状況、当日の処置、必要なPPEを確認して管理者へ共有します。感染が疑われる人を最後に訪問すれば安全、というものではありません。緊急性と必要なケアを守れる提供体制を調整します。
架空の申し送り例:8:40、家族より「Eさんが朝6時から2回嘔吐、家族にも下痢あり」と電話。呼びかけへの返答は普段どおりと家族談。訪問前に管理者へ共有し、主治医への相談担当を確認。石けん・流水を使える場所と、嘔吐物を処理するPPE・物品を再確認。診断は未確定。訪問担当Aが状態と経過を確認し、管理者が主治医の回答と次の連絡担当を共有する。
これは体制調整の例で、嘔吐だけを理由に待機してよいという判断ではありません。意識や呼吸の異常など緊急性が高い状態は救急対応を優先します。
針刺し・血液体液曝露は、片付けより初動と受診
針を使う前に耐貫通性の廃棄容器を届く位置へ置き、使用後はリキャップせず直ちに廃棄します。曝露が起きたら、針刺し・切創部は石けんと流水で洗い、眼・粘膜への曝露は水等で洗い流し、直ちに管理者へ報告して速やかな医学的評価へつなぎます。CDC/NIOSHの在宅ケア職員向け一次資料に示された初動です。利用者の感染症情報を確認し終えるまで受診を遅らせません。
退出時は、物品の処理状態、清潔収納へ戻す物、次の訪問へ持ち込む物を確認します。症状や対策の変更は、観察・連絡先・受けた指示・次の担当を所属先の看護記録に残します。

