訪問看護記録の書き方:同じ訪問をSOAP・経過記録・申し送りで比べる
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「入浴拒否」と書いたあと、なぜ入りたくなかったのか、別の方法ならどうだったのかを思い返すことはないでしょうか。次に訪問する人が知りたいのも、その部分です。本人が話したこと、看護師が見たこと、相談して行ったケアと、その反応。同じ訪問をSOAP・経過記録・申し送りで書き比べながら、残す言葉を考えます。
次に読む人は、この記録から何を知りたいか
| 記録 | 主に伝えたいこと | このあと読む人ができること |
|---|---|---|
| SOAP | 情報から判断し、どう支援につなげたか | 判断の根拠を確認して計画を見直す |
| 経過記録 | 時間の流れに沿って何が起き、どう対応したか | 実施内容と反応、連絡の経緯をたどる |
| 申し送り | 次の担当が見落とせない変化・未完了・次の確認 | 訪問前に準備し、必要な確認を行う |
三種類の文章を毎回一から書く必要はありません。経過を残す正式な記録先を決め、次の担当が訪問前に知っておきたい部分を申し送りに抜き出します。日本看護協会「看護記録に関する指針」の3章・4章でも、経過が分かる記載や正確性、書式と記載基準の整備を扱っています。SOAPを全施設で必須としているわけではないので、所属先の様式に合わせて書きます。
ケース1:「入浴拒否」を、理由と支援が見える記録へ
以下は架空の訪問例です。実際に観察していない内容を例文からコピーしないでください。
10:00〜10:40に訪問し、予定はシャワー浴。本人は「今日はシャワーが怖い。前に足が滑ったから」と話し、「体は拭いてほしい」と希望しました。浴室の床に水滴があり、マットの端が浮いています。訪問中に滑ったところを見たわけではありません。
記入済みSOAP
| 欄 | 記載例(架空) | この書き方にする理由 |
|---|---|---|
| S | 本人「今日はシャワーが怖い。前に足が滑ったから。体は拭いてほしい」。妻「マットは昨日洗って戻した」 | 発言の主語を分ける。「滑った」は本人から聞いた情報と分かる |
| O | 10:05浴室を確認。床に水滴あり、マット右端が浮いている。本人は居室で着座し会話可能。訪問中の転倒はなし | 看護師が見た事実を記載。今日の所見と過去の話を混ぜない |
| A | 本人は清潔ケアを希望しているが、浴室での滑りへの不安がシャワー実施を難しくしている。床・マットの状態を確認し、本人が受け入れられる方法を選ぶ必要あり | 「清潔ケアに非協力的」と評価せず、支援の対象を示す |
| P・実施/評価 | 本人と相談し、10:10〜10:25ベッド上で清拭を実施。本人「これなら安心する」。本日のシャワー浴は実施せず。本人・妻の同意を得て環境調整を相談する。次回担当Bは、調整状況と本人の希望を確認し、実施方法を再相談する | 計画だけで終わらず、実施内容と反応、次に確認する担当を残す |
Pに実施・評価も書くか、別欄へ書くかは記録様式によります。読む人が「これから行うのか、もう行ったのか」で迷わないよう、見出しや時刻を添えます。入浴を行えるかは浴室の状況だけで決めず、本人の状態と個別の計画も踏まえて判断します。
同じ訪問を経過記録にすると
10:00訪問。本人より「今日はシャワーが怖い。前に足が滑ったから。体は拭いてほしい」と発言。10:05浴室を確認し、床の水滴とマット右端の浮きを認める。訪問中の転倒なし。本人と方法を相談し、本日のシャワー浴を清拭へ変更。10:10〜10:25ベッド上で清拭を実施し、本人「これなら安心する」と話す。
本人・妻へ、次回までに浴室環境の調整方法を相談することを提案し、同意を確認。次回担当Bへ、床・マットの状況、本人の不安と清潔ケアの希望を申し送り。次回訪問で調整状況と実施方法を再確認する。記録者:看護師A。
申し送りは、この部分を抜き出す
次回担当Bへ(架空):本日は、過去に浴室で足が滑ったという本人の不安から、希望に沿ってシャワーを清拭に変更しました。床の水滴とマット端の浮きあり。訪問中の転倒はありません。次回は浴室環境の調整状況と本人の希望を確認し、実施方法を再相談してください。本人・妻は環境調整を相談することに同意しています。
ここまで書いてあれば、次の担当は「前回、怖いと話されていた浴室は、その後どうですか」と話を続けられます。清潔ケアの希望があることも伝わります。環境を見る際は、自宅の転倒予防で見る場所も参考にしてください。
ケース2:「変わりなし」の日、何を書けばよいか
「今日も普段どおりだった」という日も、文章を長くするために所見を増やす必要はありません。何と比べて変わらなかったか、今日は何を見てそう判断したかが伝わるように書きます。
| 短すぎる記載 | 書き直す例(すべて架空) |
|---|---|
| バイタル安定、問題なし | 9:10、座位で血圧126/72mmHg、脈拍72回/分、体温36.5℃。前回記録(10月7日:血圧128/74、脈拍74、体温36.6)と比較。本人は本日の疼痛・息苦しさを否定。数値と訴えを合わせて評価し、予定の清拭を実施 |
| 内服済み | 妻より「今朝の薬は食後に飲むところを見た」との情報。看護師による服用の直接確認はなし |
| 家族説明済み | 妻へ、本日の清拭方法と本人の反応を共有。妻は次回も同じ方法を希望。本人の希望をその都度確認することを説明 |
数値は例で、正常範囲やケアを実施できる基準を示していません。「比較して同程度」だけで安全を保証できるわけではなく、測定条件、症状、個別の指示に沿って判断します。
ケース3:連絡後に回答がまだ届いていない
「主治医へ報告済み」とだけ書いてあると、次の担当は「返事は来たのかな」と探すことになります。連絡したところなのか、返答を受けたのか、対応まで済んだのかを、時刻と一緒に残します。
| 段階 | 記載例(架空) | 次に必要なこと |
|---|---|---|
| 依頼を送った | 11:20、管理者Bへ服薬カレンダーの不一致を報告し照合を相談 | 相手が受け取ったことを確認 |
| 受け取られた | 11:25、管理者Bが内容を確認し薬剤師Cへ照合を依頼 | 回答確認の担当と予定を決める |
| 返答待ち | 看護師Aが本日13:00までに照合結果を確認。現時点で服用状況は未確認 | 状態変化時は確認予定を待たず対応 |
| 結果を追記 | 13:00、薬剤師Cから確認結果を受領。確認内容と支援方法を正式記録へ追記 | 未完了の申し送りも更新する |
最後の「確認内容」は、実際の内容を記載する欄です。例の返答を本人への薬剤指示として転用しません。具体的な依頼の伝え方はSBARの記入・会話例で紹介しています。
コピーするなら、完成した文章よりこの見出し
訪問日時/記録者:
本人・家族の発言(情報源):
本日観察・測定した事実(時刻・条件):
前回または普段との違い:
判断したことと、その根拠:
実施したケア/変更理由/実施後の反応:
連絡先・時刻・依頼内容・返答・復唱確認:
未確認・未完了のこと:
次の確認項目・担当・予定:
本人が睡眠中で話を聞けなかったなら、そのことも記録です。「本人の訴えは未確認、妻から情報収集」と残せば、次の担当は誰から聞いた話か分かります。欄を埋めるために、見ていないことや聞いていない答えを補う必要はありません。
訂正・追記で、出来事の時刻を失わない
出来事の時刻と入力した時刻は違う場合があります。「14:20に電話した内容を16:05に追記」のように両方が分かる形にし、元の記録を黙って置き換えません。電子記録は所属先の訂正・追記機能を使います。
| 見直す点 | 具体的なチェック |
|---|---|
| 情報源 | 本人の訴え、家族の話、自分の観察を区別できるか |
| 未確認 | 未測定・未確認を、異常なしや実施済みで埋めていないか |
| 実施と計画 | 予定しているケアを実施済みのように書いていないか |
| 判断の根拠 | なぜケアを変えたか、何を心配したかが読めるか |
| 継続性 | 次回の担当が、準備するものと確認事項をつかめるか |
書き終えたら、「次の担当なら、何をもう一度聞くだろう」と読み返してみます。書くまでに時間がかかる場合は、訪問メモから正式記録につなげる手順で、その場に残すメモも見直せます。
参照資料
- 日本看護協会「看護記録に関する指針」(2018年5月):3章の正確性・訂正・追記、4章の様式と記載基準を参照。
- 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」:電子記録の運用は所属先の規程と照合してください。
資料確認日:2026年10月11日。ケース・図・例文は説明のために作成したもので、特定の利用者さんの診療記録ではありません。

