訪問看護で家族介護者を支える:疲れの確認と休息につなぐ相談
更新:

「大丈夫です」と言っていた家族から、話を聞くうちに「夜はほとんど眠れていなくて」とこぼれることがあります。休んでほしくても、代わる人がいなければ介助は続きます。何時ごろ、どんな介助で起きているのか。少し離れたい時間に、誰が代われるのか。家族の暮らしも聞きながら、休息につながる相談を考えてみましょう。
「昨夜は眠れましたか」から、家族の一日を聞く
家族が同居していても、必要な介助をいつでも担えるとは限りません。家族自身は何に困り、どう過ごしたいと思っているのでしょうか。厚生労働省の家族介護者支援の行政資料も、介護者自身のニーズを捉え、支援ネットワークへつなぐ考え方を示しています。訪問では、たとえば次のように尋ねます。
| 聞く領域 | 具体的な聞き方 | 相談につながる情報 |
|---|---|---|
| 夜の介助 | 「昨夜は何時ごろ、何のために起きましたか」 | 回数だけでなく、続けて眠れる時間と介助内容 |
| 自分の生活 | 「ご自身の通院や食事は、予定どおりできていますか」 | 延期した受診、仕事・外出への影響 |
| 代われる人 | 「急な用事のとき、どなたがどの介助を担えますか」 | 名前だけでなく、時間帯・実施できるケア |
| 支援への心配 | 「使うとしたら、何が気になりますか」 | 費用、送迎、本人の反応、医療処置の受け入れ |
| 今日の安全 | 「今夜も同じ介助を続けられそうですか」 | 代替が急に必要な状況、本人・介護者の危険 |
介助の時間だけを足すと、「いつ呼ばれるか分からず、お風呂にも入れない」というつらさは見えにくくなります。本人はどう過ごしたいか、家族はどんな時間を取り戻したいか、それぞれに聞いてみます。一緒の場では話しにくそうなら、プライバシーに配慮し、別に話せる機会を作ります。
架空事例:「ショートステイは嫌」と言う妻に、もう一度何を聞くか
以下は作成した架空の相談例です。Dさんの妻は夜間の排泄介助を担い、「一晩だけまとめて眠りたい。でも泊まりに預けるのは嫌」と話しました。ここで「利用拒否」と記録すると、休息の希望まで見えなくなります。
看護師:「泊まりで気になるのは、Dさんが困りそうなことですか。それとも準備や費用でしょうか。」
妻:「夜にいつもの呼び方をしても、職員さんが分からないと思うんです。」
看護師:「呼び方と必要な介助を、受け入れ先に伝えられるか確認してみましょう。まだ利用を決めなくて大丈夫です。Dさんご本人にも、何が心配か聞いてよいですか。」
妻が気にしていたのは、夜の呼び方が伝わるかどうかでした。「預けたくない」の一言で終えずに聞くと、受け入れ先へ尋ねたいことが見えてきます。「慣れれば大丈夫」とは約束せず、本人・妻の同意を得て、ケアマネジャーに夜間の対応を相談します。
夜の介助を、何時ごろ誰が担っているか
| 時間帯 | 妻がしていること(本人・妻の話) | 調整したいこと |
|---|---|---|
| 朝 | 排泄介助、朝食準備、内服確認 | 介助の重なりと妻自身の朝食時間 |
| 日中 | 外出できるが、急な呼び出しが心配 | 予定した通院中の連絡・代替手段 |
| 夜 | 1時・3時・5時ごろに排泄介助 | 夜間のケアを担える受け入れ先と一晩の休息 |
この架空例のように時間帯で並べると、どこに支援があれば家族が離れられるかを相談しやすくなります。介護負担を採点する表ではありません。家族自身の病状や職場のことを多職種へ伝える際も、何のためにどこまで共有するかを説明し、同意を得ます。
サービスが決まった後も、休めたかを聞く
レスパイトを相談するときは、「通院したい」「一晩眠りたい」といった家族の希望に戻って、利用する時間や支援を考えます。厚生労働省の介護サービス情報公表システムで地域のサービスを探せますが、受けられるケアや条件、費用は事業所ごとに異なります。ケアマネジャー等と調整し、利用後には、家族がその時間を取れたか、本人が必要なケアを受けられたかも聞きます。
| 希望 | 検討する選択肢 | 利用前に具体化する条件 |
|---|---|---|
| 日中に通院したい | 通所・訪問サービス、家族の交代 | 送迎を含む不在時間、ケア範囲、連絡先 |
| 一晩眠りたい | 短期入所などの泊まりの支援 | 夜間の排泄・症状・医療処置、受け入れと費用 |
| 介護者が急に入院する | 緊急の代替ケア・受け入れの相談 | 今日から誰が担うか、本人の薬・ケア・連絡情報 |
| 仕事の日の負担を減らしたい | サービスの曜日・時間調整、職場への相談 | 勤務時間、送迎、仕事を継続する希望 |
面談の返事から、利用後の話まで残す
架空の記録例:10/11、妻「一晩眠りたい。夜の呼び方が伝わらないのが心配」。夜間排泄介助を1時・3時・5時ごろに行うと妻談。Dさんは「呼んだとき分かってほしい」と話す。本人・妻の同意を得て、同日ケアマネジャーへ夜間ケアの引き継ぎと短期入所の受け入れ確認を依頼。10/12、ケアマネジャーより、候補先と事前面談を調整できるとの回答。妻へ伝達し、利用は未決定と確認。10/18、本人・妻が事前説明を受けて一泊を利用。10/20、妻「夜中に起きず眠れた」、本人「呼び方は伝わっていた」。家族の感想と受け入れ先のケア情報を分けて確認し、継続利用の希望・費用・次の候補日をケアマネジャーと再相談。
妻が眠れたかに加え、Dさんは呼びたいときに呼べたかも聞きます。泊まりの準備や送迎で家族の負担が増えていないかも、次の利用を考える材料です。記録の書き方も参考に、二人の言葉と受け入れ先の話、次に相談したいことを残しましょう。調整中なら、返事を家族へ伝える人も決めておきます。
尺度を使うときも、家族が話す困りごとを聞く
J-ZBI_8などの正式な尺度を使う場合は、様式と使用条件を確認します。J-ZBI_8作成論文では質問項目・配点がウェブ上で非公開です。独自の質問へ置き換えたり、点数で「相談不要」を決めたりせず、評価日・回答者・生活の変化と一緒に使います。
「眠れない」「自分の通院をやめてしまった」と話されたら、尺度を取り終えるまで相談を待つ必要はありません。介護者自身が受診や相談をどう考えているかを聞き、受診先や地域の窓口へつなぎます。
安全の懸念がある場面は、休息の相談だけで終えない
「叩いてしまいそう」「もう今夜は介助できない」と話されたら、いま本人・介護者に危険があるか、誰がその場にいるかを確認して管理者へ速やかに連絡します。差し迫った危険では安全確保と救急・警察等の緊急対応へつなぎます。
虐待が疑われる場合は、疲れのせいと決めず、見た行為、傷、日時、本人や家族の言葉を事実として残します。高齢者虐待防止法第7条では、養護者の虐待を受けたと思われる高齢者を発見し生命・身体に重大な危険が生じている場合は速やかな市町村への通報が義務、それ以外も通報の努力義務としています。確定するまで待ったり、内部報告のみで必要な通報を終えたりしません。本人を守る対応と養護者への支援は並行して進めます。
「仕事を辞めるしかない」と話されたら
まず「お仕事のことは、これからどうしたいと考えていますか」と尋ね、希望する働き方と、介護が重なる曜日や時間を一緒に見ます。サービスの時間調整で変えられること、勤務先に相談したいことを考え、厚生労働省の仕事と介護の両立支援ツールも紹介します。制度を使える条件や待遇は勤務先で確かめる必要があるため、人事や相談窓口へつなぎます。
帰る前には、「今日伺った夜のことをケアマネジャーへ相談し、返事が来たら私からお伝えします」と、次の動きを家族と共有します。いつごろ連絡するかも添えておきましょう。看護師だけで抱えず、管理者、ケアマネジャー、公的窓口と相談をつなぐことが、家族が休める予定を作る一歩になります。

