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夜のトイレまでの道を、一緒に歩いて考える転倒予防

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訪問看護師と高齢の利用者が、夜間のトイレまでの通路と照明を一緒に確認するイラスト

昼間は通りやすそうに見える廊下でも、夜は暗く、寝起きでトイレへ急いでいるかもしれません。「行きは大丈夫だけれど、帰りに足が引っかかる」という話にも手がかりがあります。床の片付けと一緒に、寝床を出てからトイレへ行き、戻るまでをどう動いているか、本人に聞いてみましょう。

最初に「普段の支え」を聞く

床の物が気になっても、動かす前に「ここは、いつもどうやって通っていますか」と尋ねます。本人が支えや目印にしていた物まで片付けてしまうことがあるからです。同意を得て、安全を確保できる範囲で普段の動線を見せてもらいます。夜と同じ暗さにしたり、不安定な動きを無理に再現してもらったりする必要はありません。

消費者庁の高齢者の事故予防は、通り道の物やコード、濡れた床、段差、暗い場所などの見直しを案内しています。夜間の起き上がり等への注意も読みながら、目の前の利用者さんならどこで困りそうか、次のように尋ねます。

確認する場面 本人に聞くこと 見たい動作・環境
起きる 「夜、起きて最初に何へ手を伸ばしますか」 照明スイッチ、足が着く位置、補助具の置き場所
立つ 「どこを持って立っていますか」 安定した支えか、本人が使う側と届く範囲
歩く 「ここは何をよけて通りますか」 コード、敷物、段差、足元の見え方
トイレで向きを変える 「入るとき・出るとき、困るのはどこですか」 扉、方向転換、衣服の操作、補助具の扱い
戻る 「帰りの明かりは、いつ消しますか」 帰路の照明、補助具の位置、寝床へ戻る動作

手すりがあっても、立ちたい位置から届くとは限りません。どちらの手で、どの場面に使っているかを見ます。用具の選択や設置・調整が必要なら、本人の動き方をケアマネジャー、リハ職、福祉用具専門相談員等へ伝えて相談します。

寝床から照明を操作して立ち、通路を歩いてトイレで方向転換し、帰路の照明と補助具を使って寝床へ戻るまでを確認する図。
夜のトイレは「帰り」まで見る。図を大きく見る

架空事例:マットを外すだけでは、帰り道の問題が残った

以下の人物・場面・時刻は作成した架空の例です。Iさんは夜間にトイレへ行き、「帰りによく足が引っかかる」と話します。家族はトイレ前のマットを気にしていました。

本人と日中に動線を確認すると、マットの端がめくれていることに加え、寝床の照明スイッチを廊下へ出る前に切っていることが分かりました。トイレ内は明るくても、戻ると廊下は暗い状態です。

観察・本人の話 対策を一緒に考える理由 合意したこと
マットの端がめくれている 本人がよく通る場所で足に触れる 本人の同意でマットを移動し、床を確認
帰路の廊下が暗い トイレだけの照明では戻る道が見えない 寝床から使える照明の配置を家族と検討
歩行器は寝床の反対側 夜に立つ位置から届かない 担当リハ職と、使いやすい位置と通路幅を相談
本人「家族を起こしたくない」 困っても援助を呼ばない背景がある どの場面で呼ぶかを本人・家族で確認

この日に動かせたのはマットです。照明は家族が検討中で、歩行器の位置もリハ職への相談が残っています。まとめて「対策済み」と書くと、その先の相談が途切れるため、何を変え、何を待っているかを残します。

照明を用意した後も、使えているかを聞く

架空の記録例:10/11、本人「夜、トイレの帰りに足が引っかかる」。トイレ前のマットの端がめくれており、本人・家族の同意で移動。床の水濡れなし。本人より、トイレへ出る際に寝床の照明を消し、帰路は廊下が暗いとの情報。照明は家族が配置を検討中で、本日は変更なし。歩行器の置き場所は担当リハ職へ相談。10/14、家族が寝床から操作できる照明を用意。日中に本人が点灯・消灯できることを確認。10/18、本人・家族より帰路も点灯しているとの話あり。夜間の実際の動作は未観察。足が引っかかった場面、新しいふらつき、照明の使用を次回も確認する。

看護師が見たのは、日中に本人が照明を操作したところまでです。夜も明かりをつけていることは、本人・家族から聞いています。この違いを残しておけば、次の担当者も、夜間に困る場面がないかを続けて尋ねられます。照明を用意しただけで、転倒の心配がなくなったとは言えません。

物を動かした後は、いつもの動きで使えるかを見る

あれもこれもと配置を変えると、本人が新しい位置を覚え直すのに困ることがあります。まずは一番困る動作を聞き、本人と相談しながら変えてみます。その後は、次の点も見ておきましょう。

対策 変えた後の確認 見落としたくない点
床の物・コードを移す 本人が通る位置、足元が見えるか いつもの支えや目印を勝手に移していないか
照明を足す 寝床から操作、往路と帰路の照明 電源コードが新しいつまずきになる、まぶしさ
マットを移す・見直す 滑りや段差、本人が実際に通る場面 浴室など場所の用途と滑り止めの必要性を分ける
補助具の位置を調整 立つ位置から届き、通り道を塞がないか 用具の選択・高さ等を記事だけで決めない
家族へ援助を頼む 呼ぶ手段、家族が対応できる時間 「家族がいる」だけで夜間も代われると思わない

敷物には、浴室や脱衣所で滑りを防ぐための物もあります。すべて外すのではなく、何のために置いているか、滑りやめくれはないかを見て、消費者庁の対策を本人の暮らしに合わせて考えます。

新しいふらつきを、床や照明の問題だけにしない

いつもと同じ場所なのに急に立ちにくくなった、今日からめまいがする。そんなときは、環境を整えるだけでは済みません。消費者庁の高齢者事故予防の資料でも、病気や薬、身体・認知機能などが転倒に関わると示されています。いつから、どんな動作で変わったか、反応や体調も見て主治医等へ報告します。

気づいたこと 連絡へ残す情報 環境調整だけで終えない理由
今日から立つとふらつく いつから、どの動作で、普段との差、測定条件、食事・服薬 新しい体調変化も評価が必要
最近、薬が変更された 薬名・変更日、使用状況、症状の開始 時間的な関係だけで原因を薬と断定しない
転倒・強い衝撃があった 時刻、場所、頭部打撲等、本人の訴え、反応 けがや緊急性の確認が先になる

突然ふらついて立っていられない、意識がおかしい、転倒で強い衝撃を受けたなどは、消防庁の救急症状に示された救急要請を考える場面です。無理に立たせて歩行を確かめず、必要な緊急対応へつなぎます。薬の自己中止・増減は勧めません。

次の訪問でも、帰り道の話を聞けるように

  • 本人が困る動作と場所が具体的に残っている。
  • 本人が希望したことと、家族が希望したことを分けた。
  • 実施した変更と、提案・相談待ちを分けた。
  • 変更後の操作や動作を、実際に確認できた範囲で残した。
  • 次に誰が、照明・補助具・ふらつき等の何を確認するか決めた。

次の担当者には、上の項目と一緒に「帰り道で足が引っかかると話していたので、照明を使えているか聞いてほしい」と伝えます。本人が困っていた場面が分かると、続きの話を聞きやすくなります。看護記録の書き方も参考に、動かした物と、これから相談することを所属先の記録へ残しておきましょう。

役に立ったら、同僚にも。

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