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訪問看護のSBAR:電話の準備・会話・復唱・記録を一つのケースで学ぶ

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訪問看護師が電話の返答を聞きながら、ノートに申し送りの要点を記録するイラスト

訪問先から電話をして、状態は詳しく話せた。でも、切ったあとに「主治医への連絡は、私がするのだろうか」と迷う。そんな行き違いを減らすには、相談したいことと、このあと誰が何をするかまで話しておきたいところです。食事が進まない利用者さんを訪問した架空の例で、SBARの準備から会話、復唱、記録までをたどります。

電話の最初に「何を相談したいか」を置く

AHRQのTeamSTEPPS資料では、SBARを状況・背景・評価・提案/依頼の枠組みとして説明し、場面に応じた使い方を示しています。ここでは訪問先からの相談に合わせた例を作成しました。

要素 電話で伝えること 相手が分かること
S:Situation(状況) 自分と対象者、今起きている変化、今回の相談 誰について何を判断してほしいか
B:Background(背景) 普段の状態、関連する指示、今回に必要な経過 どこが普段と違うか
A:Assessment(評価) 自分の観察と考え、不明な点 何を根拠に心配しているか
R:Recommendation/Request(提案・依頼) 判断してほしいこと、必要な対応と時期 何を返答すればよいか

状態悪化が心配なときは、長い病歴を順に説明する前に、今の変化と相談したいことを伝えます。分かっていない項目があっても、それを理由に連絡を待たず、必要な対応を優先します。

SBARで状況と依頼を伝え、返答を復唱確認し、担当と確認予定を記録する連絡の循環図
伝える → 受け取る → 認識を確かめる。この最後までが申し送りです。 図を大きく見る

ケース:朝から食事が進まない利用者さんを訪問した

以下は会話の構成を学ぶ架空例です。 数値や返答は診断・救急判断・飲水量の指示ではありません。実際の緊急性、個別の指示、所属先の連絡手順に沿って対応します。

13:00の訪問。本人は「朝から食べたくない」と話しています。妻によると、普段は朝食を全量食べるところ、本日は主食を二口、昼食はまだ取っていません。昨日までは普段どおりだったとのこと。妻は「飲んだ量は数えていない」と話しました。看護師Aは体温37.6℃、血圧118/70mmHg、脈拍88回/分を13:05、座位で測定しました。本人は質問に答えています。尿の量・最終排尿時刻、朝の内服状況はまだ確認できていません。

手元のメモを見ながら、話す順を整える

手元のメモ 記入済み例
自分・対象 訪問看護師A。現在利用者Dさん宅。相手と対象者を所定の方法で確認
変化と開始 今朝から食欲低下。本人の訴えと妻の情報
普段との比較 普段は朝食全量。本日は主食二口、昼食未摂取
今の観察 13:05座位、体温37.6℃、血圧118/70、脈拍88。質問に返答あり
不明なこと 本日の総飲水量、最終排尿、朝薬の実施状況
依頼 今後の評価・連絡先・訪問予定調整について相談したい

妻から飲水量を聞けていなければ、「量はまだ分かりません」と伝えます。「飲水量も少ないはず」「薬は飲んだはず」と話を補わず、本人・妻から聞いたことと、これから尋ねることを分けておきます。

一本の電話にすると

看護師Aから管理者Bへの相談例

S:看護師Aです。現在Dさん宅です。今朝から食事摂取が減っているため、このあとの評価と連絡先、訪問予定の調整を相談したいです。

B:妻によると昨日までは普段どおりで、通常は朝食全量です。本日は主食二口、昼食は未摂取です。個別指示書と前回記録は手元で確認できます。

A:本人は「朝から食べたくない」と話し、質問には答えています。13:05、座位で体温37.6℃、血圧118/70、脈拍88でした。飲水量と排尿、朝薬の実施は未確認です。普段からの急な摂取の変化があるため、原因と今後の対応を確認する必要があると考えています。

R:どの項目を追加確認し、どの連絡先につなぐかを相談したいです。私はDさん宅で確認を続けています。次の訪問の調整もお願いできますか。

実際には、必要に応じて呼吸状態、痛み、意識や反応など、判断に重要な所見も伝えます。例に載っていない観察を不要と考えることや、この数値なら急がなくてよいと判断することはできません。

「様子を見て」で電話を切らないための聞き方

「様子を見て」と返ってきたとき、「自分が考えている観察で合っているだろうか」と迷ったまま電話を切らないようにします。AHRQのCheck-Back資料は、受け手が内容を言い直し、送り手が合っているか確かめる方法を説明しています。曖昧に感じた部分は、次のように聞き返せます。

曖昧な返答・残る疑問 確認する言い方
「様子を見て」 「何を、誰が、いつ再確認しますか。どの変化で再連絡しますか」
「主治医に聞いて」 「どなたが連絡しますか。返答は誰が受け取りますか」
「あとで連絡する」 「回答の確認予定と、届かなかったときの連絡先を決めてよいですか」
「ご家族に説明して」 「説明する内容と、家族ができる範囲を確認したいです」
聞き取れない・記録と異なる 「聞き取れなかった部分をもう一度お願いします。復唱して確認します」

薬剤名・量・回数などの指示を受ける場合は、認識のずれが生じないよう、所属先の指示受け・復唱・記録の手順に従います。聞き取れていない内容を推測して実施しません。

このケースの返答確認と記録

薬剤の変更や救急判断ではなく、管理者との連絡分担を決める例を示します。

看護師A:「主治医への連絡と次の訪問の調整はBさんにお願いし、私はDさん宅で飲水・排尿・服薬について聞き取り、記録に追記します。13:30までに連絡状況を教えていただく、ということで合っていますか」
管理者B:「合っています。状態が変わった場合は、その時点で連絡してください」

13:30という時刻は、この架空ケースで決めた業務上の確認予定です。医療上の待機時間ではありません。

記録欄 記入済み例(架空)
連絡 13:12管理者Bへ電話。朝からの摂取低下、本人・妻の発言、13:05の測定値、未確認項目を報告
依頼 評価・連絡先と次の訪問調整を相談
合意と確認 Bが主治医への連絡と次の訪問調整を担当。Aが未確認の飲水・排尿・服薬情報を確認し追記。Bが13:30までに連絡状況をAへ共有。内容を復唱しBと一致を確認
未完了 主治医からの返答は13:15時点で未受領。Aが現地で確認を継続

主治医から返事が届いたら、いつ、どんな内容を受け、その後どう対応したか、本人の反応も追記します。次の担当が古い「返答待ち」を読んで迷わないよう、申し送りも書き直しておきます。

夜間、家族の「いつもと違う」をどう受け取るか

家族から「朝より元気がない」と電話があっても、看護師はその姿をまだ見ていません。どんな様子を見てそう感じたのかを尋ね、家族の言葉として残します。電話だけでは分からない所見を「異常なし」で埋めないようにします。

電話で得た情報 記録の仕方
妻「朝より元気がない」 妻からの情報であることと、何が違うと感じたかを具体的に確認
体温を測っていない 未測定。測定値を以前の記録から補わない
相手の説明がつかみにくい 理解できた情報と確認できなかった情報を分け、追加確認・相談へつなぐ
連絡がつかない 試みた連絡先と時刻、次に使う連絡経路、対応担当を残す

緊急対応が必要な場面ではSBARをきれいに埋めることより対応が先です。オンコールの連絡経路はオンコール負担の整理、正式な記録はSOAP・経過記録の比較例で確認できます。

短い練習:二人で一つのケースを引き継ぐ

送り手は上のケースから電話を組み立て、受け手は「次にすること」を三行で書きます。終わったら、二人の紙で次の三点が同じか比べます。

  1. 今、何が変化していて、何がまだ未確認か。
  2. 誰に、何の判断・対応を依頼したか。
  3. 誰が、いつ、何を確認し、変化があればどこへ連絡するか。

受け手のメモに「誰が主治医へ連絡するか」がなければ、その部分をもう一度話してみます。背景が足りず判断できなかったなら、今回の相談に必要な経過を足します。短く言えたかだけでなく、電話を切ったあと二人が同じ理解で、それぞれの役割を果たせるかを確かめましょう。

参照資料

資料確認日:2026年10月11日。図・ケース・会話と記入表は、本記事独自の架空例です。

役に立ったら、同僚にも。

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