メインコンテンツにスキップ
読みもの一覧へ

訪問看護の熱中症予防:室温・水分・訪問のない日の備え

更新:

夏の自宅で訪問看護師と高齢の利用者が、室内環境と水分の備えについて話すイラスト

冷房は動いているのに、寝室に冷気が届かない。飲み物は置いてあるのに、利用者さんがふたを開けられない。「冷房をつけて、水分を取ってくださいね」と伝えても、暮らしの中で使えるとは限りません。夏の訪問では、本人がいる場所の暑さと、冷房や飲み物を実際に使えるかを一緒に見ていきましょう。

外がどれだけ暑いかに加え、いつも座る場所を見る

「ここは暑くないですか」と聞いて「大丈夫」と返ってきても、本人がいる場所の室温を見ておきます。熱中症は屋内でも起こり、高齢者は暑さやのどの渇きを自覚しにくく、体温調節機能も低下しやすいことが厚生労働省の予防案内に示されています。

環境省の暑さ指数(WBGT)は、気温・湿度・日射や輻射熱などを考慮する指標です。地域の値は訪問計画の材料ですが、居室の温度そのものではありません。エアコンの設定温度、室温、WBGTを同じ数値として扱わないようにします。

情報 使いどころ それだけでは分からないこと
地域のWBGT・アラート 暑い日の事前連絡や移動・訪問体制の調整 その人の居室が涼しいか、熱中症になっているか
エアコンの設定 本人と操作・風向き等を相談する 寝室や本人の居場所の実際の室温
居室の温湿度 測定場所・時刻をそろえて、調整後と比較 本人の意識・症状・飲水状態
本人の状態 反応、会話、症状、飲めるか、経過 一つの症状だけでは原因を確定できない

架空事例:冷房を嫌がる理由は「寒さ」だけではなかった

以下の人物・測定値・時刻・経過は、作成した架空の例です。安全な室温の全国共通基準や、冷却に要する時間を示すものではありません。

Gさんは日中独居。10:00、居間は室温31℃、湿度68%、冷房は停止。本人は普段どおり会話でき、「つけたら寒くなって、止め方が分からない」。リモコンの表示が小さく、運転ボタンと温度ボタンを区別できませんでした。

分かった障壁 訪問中に試したこと 実際に確かめたこと
小さな表示が見えにくい 本人と運転ボタンの位置を確認 本人が押して運転を開始できたか
風が直接当たる 風向き・座る場所を相談 本人の冷えへの不快感、居場所の室温
訪問後はすぐ止める 止める理由を家族と共有 家族が様子を確かめる時間と、連絡できない場合の対応
飲み物が棚にある 手が届く場所へ置き、容器を確認 本人がふたを開け、個別の指示に沿って飲めるか

「冷房はありますか」の次に、「いつもどうやってつけていますか」「使いにくいところはありますか」と聞いてみます。操作が難しいのか、費用が気になるのか、風が苦手なのかで、一緒に考えることは変わります。使い方を説明したら、本人に操作してもらい、実際に使えるところまで見届けます。

冷房の操作、本人の居場所、飲み物へのアクセスを実際に確かめ、調整後の状態を再測定し、訪問後の確認担当へつなぐ。意識異常や自力で飲めない状態は救急対応を優先する。
冷房が「ある」から「使える」へ。図を大きく見る

冷房をつけた後と、家族の電話の結果を残す

架空の記録例:10:00居間31℃・湿度68%、冷房停止。本人との会話は普段どおり、めまい・吐き気の訴えなし。本人「止め方が分からない」。リモコンの運転ボタンを本人と確認し、本人が冷房開始。風向きと居場所を調整。10:25同じ位置で室温29℃・湿度64%、運転継続、本人「この風なら困らない」。飲み物の容器を自分で開けられることを確認。家族へ本人の同意を得て共有し、12:00に電話で運転・体調を確認することを合意。家族が連絡できなければ管理者へ連絡。12:05家族より、電話で普段どおり応答し冷房を使用中との報告。室温の実測は未確認。翌日、担当Aが冷房の操作・居場所・体調を再確認する。

家族の電話で分かったのは、本人が普段どおり応答し、冷房を使っているということです。その時点の室温までは分かりません。訪問中に温度が下がったから安心と決めず、体調と、帰った後も冷房を使えているかを追っていきます。

飲み物は、手に取って飲めるところまで見る

「水分を多めに」と声をかける前に、その人の飲水指示を見ます。心臓や腎臓の病気などがある方には、一般的な量を一律に当てはめられません。環境省の高齢者向け資料も、持病がある場合は医師への相談を案内しています。最近の薬の変更や使っている状況も相談先へ伝えますが、自己判断で中止や増減を勧めることはしません。

確認すること 実際の質問・動作 相談につなぐ内容
個別の飲水指示 制限・目標・変更の有無を記録で確認 不明なら主治医へ具体的な摂取状況とともに相談
容器と手の届く場所 持つ・開ける・口へ運ぶ 動作の障壁と、準備を担える人
飲み込み むせ、声の変化、現在の水分形態 主治医・ST等へ評価と形態を相談
摂取の経過 いつ何を飲み、どこまで把握できたか 置いた量と飲んだ量、本人談と実測を区別

経口補水液は日常の水分補給へ一律に置き換えるものではありません。ナトリウム・カリウム・糖質等の制限、使用する状況と製品表示を確認して医師・管理栄養士等へ相談します。消費者庁の経口補水液の案内を参照してください。

反応がおかしい、飲めないときは、すぐ応急対応へ

暑い環境にいた経過と、意識・反応、症状、自力で飲めるかを確認します。意識がない・おかしい、自力で水分を取れない場合は直ちに119番通報へつなぎます。涼しい場所を確保し、衣服をゆるめて体を冷やします。意識や飲み込みに不安がある人へ無理に飲ませません。厚生労働省の熱中症応急処置に沿って行動し、救急指令の指示を受けます。

すること 引き継ぐ情報 遅らせないための注意
救急要請が必要か確認 意識・反応、自力で飲めるか、症状の開始 意識・飲水の異常があれば待たない
涼しい場所・冷却 暑い場所にいた時間、冷却開始時刻 安全に移せない場合も、可能な環境調整と冷却を行う
救急隊へ引き継ぐ 住所、年齢、持病、普段の状態、観察した変化 薬や資料の準備のために通報を遅らせない

冷却しても改善しない、悪化する場合は医療機関へつなぎます。体温を測ることに気を取られ、反応の変化や飲めない状態への対応が遅れないようにします。救急隊や医療機関へは、暑い場所にいた経過と、行った冷却、その後の様子を伝えます。夏の脱水・食欲低下の観察も参考に、対応した経過を所属先の記録へ残してください。

看護師自身の予防も、訪問計画に入れる

暑い日の予定を組むときは、移動の途中で休める場所や飲み物の準備も考えます。厚生労働省の職場向け熱中症ガイドを使い、休憩をどう取るか、体調が変わったら誰へ連絡するかを管理者と話しておきましょう。体調が悪くなったら、そのまま次の訪問へ進まず、担当や予定の調整を頼みます。

帰る前には「このリモコンでつけられますか」「飲み物はここで取りやすいですか」と、本人ともう一度見てみます。訪問のない時間は誰が様子を尋ねるかも決め、次の暑い日にも使える方法を一緒に残しておきましょう。

役に立ったら、同僚にも。

シェア
ほかの読みものを見る